彼女の後輩に変な事を言われてから、確か2~3週間後。
友達と飲んでる店で偶然出くわした。
実はこれ偶然じゃなくて、後輩が俺の友達に探りを入れてて、偶然を装ってたらしい。
それは後々友達に言われた。
前に言われてた内容が気になるから、その場で後輩に聞いてみた。
だけど言葉を濁すだけで答えてくれない。
話しを聞き出せたのは帰り道で、駅までフラフラ歩いていた時でした。
「多分先輩二股かけてますよ。同じ大学にいる先輩と」
「なんだよ!それ、見たの?マジで?」
「先輩はバイト週ぐらいしか入ってないし」
「マジで?週4とか言ってたのはウソか?」
「もうこれ以上言えないんで・・・ごめんなさい」
彼女に直接問いただす事も出来ず、直接確かめる事にした。
彼女がバイトの日、僕は彼女に飲みに行くと伝えた。
0時位には帰るからって言っておいて。
21時過ぎに彼女の家へ行ってみると、部屋の明かりがついてた。
彼女は僕に「バイト中だよ」とか「今休憩中」だとかメールを送ってきてた。
なのに部屋の電気がついてるなんて、ちょっと出来過ぎっぽい気がしてた。
マンションの周りをウロウロして悩んで、直接部屋に行く決心をした。
ドアの前に立ち、インターフォンを鳴らしても反応なし。
何度も何度もインターフォンを鳴らした。
携帯に電話をしながら、何度も鳴らした。
「もう分かってるからドア開けてくれる?」
そうメールを打ってしばらく廊下に立ってた。
そしたらドアが開いて、彼女が顔を出してきた。
「なによ・・・」
明らかに焦ってる表情だったし、化粧もほぼしてない。
「同じ大学の男がいるんだろ?話させてくれない?」
「そんな人いないわよ!なに言ってんの。いきなり来て」
逆ギレっぽい口調で言い返す彼女を見て、いるんだなって確信した。
だからドアノブを掴んで強引に開けて、部屋の中に入って行った。
いつもと変わらない部屋だったけど、何となく雰囲気が違う気がした。
「誰もいないって言ってるでしょ!」
完全にキレ気味で僕の腕を掴みながら言ってきた。
僕はベランダに近付き、カーテンを開けた。
そこには手にグラス、足元にブーツ、Tシャツにジーパン姿の男がいた。
ウソだろ・・・ってホント頭が真っ白になった。
扉を開けて「こっちこいよ」って、男を部屋に招き入れた。
「で、これはどういう事?こちらが彼氏?」
「あ・・・いや・・・・」
「もう何なのよ!いきなり入ってきて。彼は同じ大学の友達!」
「へぇ~友達か。友達が何で隠れるの?しかもバイト中じゃなかったっけ?」
「勘違いされたくなかったからそっちに行ってもらったの!」
「なぁ、コイツの事好きなの?」
「あ・・はい・・・」
「彼氏がいるって言われなかった?」
「いるのは・・・・知ってます・・・・・」
「ちょっと!もう二人とも出て行ってよ!」
「もう出てくよ、だから黙ってろって」
「あの・・・・俺、彼女の事好きです。だからちゃんと付き合おうと思ってます」
「あぁ~イイんじゃないの?俺もう別れるし。その前に殴ってイイ?」
初めは頭が真っ白だったけど、だんだんイライラし始めてた。
だからそういっていきなりソイツを殴った。
ノーガードで思いもよらなかったらしく、思いっ切りヒットしてぶっ倒れた。
それで倒れたそいつのケツを、思いっ切り蹴り飛ばした。
「やめてよ!!!」
彼女は後ろで叫んでた。
蹴りを入れたあと帰ろうかと思って彼女の方を向いたら、後ろから後頭部を殴られた。
勢いで目の前にいた彼女に倒れ掛って、二人して倒れた。
もうそこから完全にブチギレて、僕はそいつを一方的にボッコボコにしてた。
「イイ加減にしてよ!!!」
振り向いたら彼女が手に包丁を持って、僕の方に刃先を差し出してる。
おぉ・・・これはヤバい。
彼女は泣いてたらしく、目の周りを涙でグチャグチャにしてて、ヤメテよ!と叫んでた。
包丁を見てビビった僕は、蹴るのをやめて彼女をなだめ始めた。
気が付いたら今度は浮気相手が、右手につっかえ棒を握ってるわけです。
彼女の刃先と浮気相手のつっかえ棒に狙われ、またもや頭は真っ白。
狭い8畳の部屋だったから、どう逃げて良いのかって感じで。
何とか彼女を説得して包丁を置くように言って、冷静に話し合おうって言い続けた。
多分だんだん冷静になってきたんだと思う。
男も彼女も興奮から冷め始めてきてた。
2人に凶器を置いて座るよう促し、座ったと同時にダッシュ。
玄関にある靴を手に取り、靴下のまま階段を下まで走った。
それ以来彼女とは会ってないけど、ホント怖い思い出。
修羅場ってあんな感じなんだって今でも身震いする。
就職してから引っ越したし、携帯も変えたからのは言うまでもありません。
というか、あの日の夜から、しばらく友達の家を転々と泊まり歩いてたし。
家に帰ったら来るんじゃないかって恐怖で。
卒業してから友達に聞いた話。
ボクに教えてくれた後輩の女の子は、その男と付き合ってたらしい。
未練タラタラで僕にチクッたらしい。
今では笑い話になってるけど、あの鬼のような形相は忘れられない。
終わり。
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