『アタシ、タクシーからちゃんと歩いたんですか?
朝歩いた時に右足が痛かったので、もしかして転んじゃったのかなって』
『サンクスの前でよろめいた時に、足を挫いたみたいですよ。
歩けそうになかったので、悪いとは思いましたがおんぶしたんです』
『えっ...そうなんですか?!どうしよう...ホントご迷惑をおかけして...』
『いえいえ、軽かったですしその方が楽だったんで』
私は笑いながら言った。
もしかしたらあの時の悪戯を覚えていたら...
そんな不安もあったのだが、覚えていないようだったので安心した。
『絶対重いですよー。体重がバレたみたいで恥ずかしいです』
私の軽い受け答えに、恭子も安心したようだ。
『玄関で帰ろうかと思ったんですよ。
でも藤村さんそのまま寝ちゃって。それでソファーに運んだんです。
寝室までは申し訳なくて入れなかったので』
『こんな酔っ払いは玄関に捨てて良かったんですよ。
中島さんてホントに優しいんですね』
次第に打ち解けあってきた。
料理も美味しい。恭子が注文したワインも美味しい。
それ以上に、目の前には素晴らしく綺麗な恭子がいる。
食事が終わり店から出ると、恭子がもう一軒行きたいと言った。
この前、友人の結婚式の2次会で行ったバーがあるのだという。
今度は私が御馳走するという事で、そのバーへ向かった。
表参道から歩いて10分、ひっそりとした路地裏にバーはあった。
細い通路を進むと小さなエレベーターがある。
5Fにバーがあるので、私達はエレベーターに乗り込んだ。
『今日はそんなに呑まないで下さいね』
軽いギャグを言う私。
恭子ものってきて『そしたらまた送って下さいね♪』という。
『今度は玄関先に捨てておきますから』
『えぇ~ちゃんと2Fの寝室まで連れて行って下さいよぉ』
つづく。
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