『そろそろ十条だよ。どこらへんで降ろせばイイ?』
十条の駅へと向かう道で私は恭子に言った。
『途中にサンクスがあるので、そこで結構です』
呂律がまわっていない。大丈夫なのか。
するとスグにそのサンクスが見えてきた。
運転手に言って、そのサンクスの前で停めた。
『藤村さん、着いたよ。サンクスの前に着いたよ』
虚ろな目でキョロキョロし、目的地だと認識したようだ。
外に出て恭子を促した。
恭子は『よいしょ...よいしょ...』と可愛く呟きながらタクシーから降りた。
目の前に立った瞬間、恭子はよろめいた。
『大丈夫??』
私は恭子の腕を掴んだ。
『はぁ~い、大丈夫ですよ~』
全然大丈夫じゃないじゃんか。
立ってるのもままならない。
仕方がない。家まで送っていくか。
私は恭子を一度タクシーの座席に座らせ、料金を支払った。
もちろん領収書も。
ここから帰るタクシー代も会社が出してくれるかな...
そんな心配が頭を過ったが、恭子をそのままにしておくことはできない。
会社で何を言われるか分かったもんじゃない。
料金を支払い、恭子の腕を持ちながら一緒に歩く。
『家はどっちなの?』
『あっち!』指を指す恭子。
呑気なもんだな。
私は恭子の指差した方向に歩きはじめた。
数歩歩いた瞬間、恭子はバランスを崩して転びそうになってしまった。
強引に腕を掴んでいたので転倒はしなかったが、どうやら足を挫いたらしい。
ヒールまで脱げてしまった。
仕方がない。
私は恭子のヒールを持ち、しゃがんだ。
『おんぶするから背中に乗って』
つづく。
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