自分は子供の頃、大の鉄道ファンで、幼少期にはよく鉄道見学をしたり、プラレールやスーパーレールなどの玩具で遊んだり、鉄道関連の書籍を読んだり、写真を撮影したりしていた。
特に幼稚園時代には近くの大工場の引き込み線の踏切で貨物列車の入れ換えに狂喜していて、踏切警手のおじさんたちの名物にもなっていた。
そんな自分が小学校の頃、巷では「ブルートレインブーム」が巻き起こり、よく親にその最高峰とでも言うべき、牽引機関車の直流仕様EF65型・1000番台機がヘッドマークを輝かせる東京発九州行きのブルートレインに乗せてくれとせがんでいたが、中々叶わなかった。
それに懲りずに自分は必死で「乗せてくれ!!」と懇願し続けて、両親もその熱意に折れたのか、ようやくO.Kしてくれた。
その頃はブルートレインブームも下火になって久しく、自分は既に中学2年生になっていたが、長年の憧れだったトップクラスの寝台特急に乗って反対側の西日本に行ける時がきたのだ!
やったぜ♪
しかも、生まれて初めての長距離の一人旅である。
そのブルートレインは当時、東京から西鹿児島までの日本最長距離を走破する「はやぶさ」で、自分の行き先は遠戚のいる熊本。
1学期の終業式を終えた翌日、8年振りに飛行機に乗り、函館空港から羽田に向かって夕方、生まれて初めて東京駅で自分の目でそのブルートレインにお目にかかった。
自分はB寝台車の2段ベッドだ。
そして、お話はここからになる。
早速ホームで待機するそれらのブルートレイン(先発の「さくら」、自分の乗る「はやぶさ」、後発の「みずほ」)を写真に収めて自分の座席に戻ると、相方の乗客がいた。
大人びた感じの女性だ。
馴れ馴れしい自分はすかさず挨拶をして簡単に自己紹介をした。
「はじめまして!〇〇(名前)と言いま!北海道から来ました。よろしく!」
彼女も微笑んでハキハキとした口調で「わぁ、遠くから来たんですねぇ…。あたしは東京の〇〇美奈子です!こちらこそよろしく!北海道かぁ~…。行ってみたいなぁ~。」
聞いてみると、何と見かけによらず彼女は自分より1つ年上の中学3年生だと言う(ハッキリ言って、女子大生かOL さんかと思った)。
落ち着いた感じの仕草で、水泳をやってるらしく、背の高い体育会系のガッチリした体型でボーイッシュなショートのヘアスタイルだ。
自分「どこまで行くんですか?俺は熊本までです…。」
美奈子ちゃん「あら、これまた偶然ですねぇ。あたしも熊本までなんです。おひとりですか?」
自分「はい!美奈子さんもですの?」
美奈子ちゃん「ええ…。熊本からスタートして、鹿児島とか宮崎とか九州を半分くらい旅行する予定なんです。」
非常に嬉しいことに同じく旅行の好きな鉄道ファン(今でいう「鉄子」ってヤツか?=笑)で、彼女もブルートレインは今回が初めてだそうだ。
車窓から見える普段地元ではお目にかかれない直流電気機関車や電車などを見て感激する自分に「よっぽど嬉しいんだね。そっか、北海道ってディーゼル(機関車)なんだよね?」と問いかけた。
「はい、田舎なもんで電気機関車は交流のがせいぜい札幌の周りに走ってるくらいで、後はみんな気動車かディーゼル機関車なんですよ。」(この頃はまだ国鉄の分割民営化前で、青函トンネルも開通していなかった。)
「もう、敬語はいいよ(笑)ざっくばらんに話しなよ。」と自分をリラックスさせてくれた。
鉄道ネタの他、北海道や九州の話など道中色々と話は弾んで、食堂車でも一緒に食事をして、その際に自分は「端からみて、オレたちは何に見えるかなぁ?恋人同士だとか…。」なんて冗談半分に彼女に聞いたら「ただの友達でしょ。まさかカップルには見えないでしょ!!うちらまだ中学生だもん。」と笑って答えた。
中学生ながら、女寝台特急一人旅を敢行した彼女は冒険好きのサバサバした性格だ。
ベッドに戻り、ガタンゴトン揺られながらお互いに眠りに就く…。
翌朝、目を覚ますと、進行方向左側には朝焼けの瀬戸内海が広がる。
ぼーっと車窓から眺めてる俺に後ろから美奈子ちゃんは肩を軽く叩いて「おはよう!綺麗な日の出ね…。」と一緒に恍惚に浸る彼女に自分は「美奈子ちゃんも綺麗だよ(^-^)v」と囁くと「またまたぁ~…。」と軽く小突く。
下関駅で交直流両仕様のEF30型、そして関門トンネルをくぐって門司駅で交流仕様のED76型とそれぞれ電気機関車が交換されたが、彼女と一緒に機関車の前で短い停車時間ゆえのギリギリのタイミングで記念撮影もした。
途中自分たちはこの「はやぶさ」のヘッドマーク入りの乗車記念のスタンプを押した。
九州に上陸して、車窓の右側に広がる北九州の街並み…。
自分「おお、若戸大橋!!でけぇよなぁ~。」
美奈子ちゃん「そうよ!!若戸大橋。凄いロマンチックよね~…。」
この間にはほんのりと寝台特急の車内に青春のデュエット気分が漂った。
昼に熊本駅に到着して、「今日はとっても楽しかったよ♪いい思い出になりそうだよ。またいつの日か…。」とお互いにバイバイ。
コメント
鷹翔さん
萌えた体験談スペシャルの管理人です。
ドメイン指定でjprevo.comからのメールを受け付けていないようですので、コメント欄より失礼します。
この度は読み応えのある体験談を投稿して頂き有難う御座いました。
またの体験談を楽しみにしておりますので、気軽にお送り下さい。